カバーアルバム「カバ」考
- 2013.06.06 Thursday
- 22:28
堂本剛くんの初のカバーアルバム「カバ」の発売からほぼ一カ月、いまだ飽きることなく聴き続けております。
発売当初は、「Music Station」「僕らの音楽」「Songs」「Music Fair」といったテレビの歌番組への久し振りの連続出演にテンションが上がりました。歌番組で歌うバージョンはまたCDとは違って生に近い楽しみがあり、ミュージシャンの方々とのセッションは見ごたえがありました。
そのお祭り状態からちょっと落ち着き、じっくり聴いた「カバ」に今、思うこと。
彼自身は当初気が乗らなかったというこのカバーCDの発売、でも、その結果とても充実した内容になった気がします。
カバーする曲を、「なぜこの曲を自分が歌うのか」理由づけできる楽曲にしぼり、彼にとって思い入れのある楽曲のみをアーティストへのリスペクトを込めて歌うという姿勢。
そうして生み出された新たなる曲達は彼が今まで生み出してきたソロワークに対するスタンスともちっともずれていません。
そこには原曲への安易な模倣はないし、勝手な暴走もない。どの歌にも彼の世界がみえる、それどころか今までの彼の作品に見える音楽要素、ソウル、ファンキー、ジャズ、ブルース、そしてJ-POPの感覚をカバー曲を通じてあますことなく表現している感じすらします。にもかかわらず、彼が歌う「人生を語らず」に対して「参ったね!」と吉田拓郎さんが言ってくださった(「幸拓のオールナイトニッポンGOLD」にて)、ように、「原曲をこんなに変えちゃっていいのか?」という疑問は出てこなかった。そこには原曲に対する純粋なリスペクトがあったから、丁寧に歌う姿勢に心動かされたから。
長い間待ち望んでいたカバーアルバムではありましたが、ファンとして「剛くんの声で聴けるならどんな楽曲でもいいなあ」と軽い気分でとらえていました。でも、今回は、彼のこだわりにやられた気分。
「アーティストとして歌を歌っていくのはそんな簡単なことじゃないんだよ」って示したかったのかなとさえ感じました。アルバムのタイトルが「カバ」という点にも、彼のそんなこだわりを感じるのは考えすぎかな…。
一方、今回セルフカバーした2曲、「街」と「優しさを胸に抱いて」、
「街」(通常版のみに収録)は、重いテーマの楽曲にもかかわらず、「今それを歌う自分」に対する彼の余裕が感じられました。当時はなんだか苦しそうな叫びのようなものを感じて、好きな曲だったにもかかわらず聴く時を選んでしまっていたけれどこのアルバムに収められているバージョンは安心して聴ける気分。
「優しさを胸に抱いて」(限定版のみに収録)は十代の頃の歌詞と、今回加筆した三十代の剛くんが描いた歌詞を合わせたちょっと珍しいセルフカバー。世代を超えた彼の想いを感じることができる素敵な仕上がり。
2曲とも「自分の作品に対する自信」が見えて、彼の成長を感じさせる曲になったなあと思いました。
そして、通常盤の最後に入っているオリジナル曲、「雨恋-amagoi」は数年前に作ったものだそうですが、雨の風景が頭に浮かぶ、心にストンと落ちる曲。カバーアルバムのさりげない終わりを演出してくれているのかもしれないです。
こんなかんじで、聴けば聴くほどはまっていくので、まだまだ沢山の方に聴いて欲しいアルバムです。